「高卒採用の教科書」編集部です。

高齢化が進み、若い人材をどう確保していくかを課題に掲げている企業が増えています。今回は、神奈川県立田奈高等学校を舞台にして始まったプログラム「バイターン」をご紹介いたします。

バイターンがどのような流れで進んでいくのか、また実際に導入した事例もお伝えしますので、興味がある方はぜひ参考になさってください。

1.バイターン（教育的有給職業体験プログラム）とは？

バイターンとは、NPO法人が行う中間的就労支援事業モデルのことで、アルバイトとインターンシップを掛け合わせた造語です。高校生の中には、家庭の事情などにより様々な困難を抱えている生徒が数多くいます。バイターンは、そのような環境下の高校生を取りこぼさず、高校生と地域の企業を結ぶ架け橋の役割を担います。

①企業のメリット

• バイターンの受け入れ先になることで、貴重な若い労働力を確保できるチャンスが広がる。
• 高校生と直接関わることで、若い人材の受け入れに慣れることができる。
• 企業と高校生がお互い納得してから雇用契約を結ぶことができるため、入職後の「職場環境が合わなかった」「やりがいを感じない」などのミスマッチが起こりにくく、入職後の離職率も低くなる。

②高校生のメリット

• 社会経験が少ない高校生は、職業体験や研修を受けることで、自分自身の興味や可能性を広げるきっかけになる。
• 実際の職場環境に身を置き、自身が選んだ業種・職種に触れることで、自分が働くイメージが湧く。
• 企業やNPO法人のコーディネーターからフィードバックやサポートを受けられる。そのため、1度のバイターンで就職に繋がらなくても、次の就職活動に対して前向きな気持ちになることができる。

2.バイターン実施までの流れ

バイターン実施にあたり、NPO法人が高校生と企業のマッチングを行い、職業体験や有給研修、そして正規雇用までの道のりをサポートします。ここでは、高校生がエントリーしてから採用に至るまでの流れを詳しくご説明します。

①研修の実施

就職希望者、もしくは進路が決定しない生徒が多い高校の在校生・卒業生を対象に、NPO法人が基本的なビジネスマナーを研修します。その中で、高校生自身がバイターンを希望もしくは学校の先生やスタッフの促しにより、バイターンにエントリーします。

②マッチング

バイターンを希望している高校生とNPO法人のコーディネーターが面談を行います。コーディネーターは、幅広い業種・職種の中から高校生に合った企業をマッチングし、バイターン先を決定します。

③職場体験

受け入れ先の企業が決定した生徒は、3日間程度の無給の職場体験を行います。 高校生は、体験期間中に日報を作成して企業からコメントをもらい、担当コーディネーターへ適宜相談することを通して、自身の適正や課題、業種・職種への理解を深めます。

④有給研修

高校生がアルバイトを希望した場合は、企業と高校生・保護者間で有給のアルバイト契約を結びます。高校生がアルバイトを希望しない場合は、バイターン終了となります。

⑤正規雇用

適正が高い高校生は、正規雇用の契約を結びます。（場合によっては、アルバイト契約が継続されるケースもあります。）
企業は、高校生の就労状況などの課題があれば、雇用後もNPO法人からフォローを受けることができます。

3.バイターン実施の事例

バイターンの受け入れ先は、地域の水産加工業者、ペットショップやフードコートと幅広い業種・職種のラインナップがあります。高校生にとっては、興味に応じて地域やその土地の特産品に触れる機会にもなるため、バイターンを通して地域に愛着が湧き、結果としては地元での就職に繋がったという声も上がっています。

例えば、チラシ等を各個宅の郵便受けへ直接投函するポスティング体験をしたバイターン参加者からは、「作業が楽しかった」「緊張したが、なんとかなってよかった」「仕事ブランクが気になっていたが、体を動かすことができてとてもいい経験になった」という前向きな声が聞かれました。

4.まとめ

地域と学校との結びつきが希薄な現代だからこそ、高校生が進路未定のまま学校を卒業するという状況にアプローチし、就職を機に地元から若者の流出を防ぐことが重要となってきます。
その点、バイターンは企業や高校生にとって負担が少なく、メリットが大きい存在とも言えます。企業は今後の若い労働力を確保するためにも、バイターンという選択肢を持っておくとよいかもしれません。

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